シーン23「謎の二人との出会い」

−ザーーーッ−


 遠くの方で、雨の音がする。


−ザーーーッ−


 前にもこんなことがあったような。

 ゆっくりと目を開けると、綺麗な瞳がこちらを見つめている。

「ママ?」
「ん?」

 それは綺麗な青い瞳。

「あ、ごめんなさい」
「ふふ」

 私、ひざ枕させられてるんだ。頭を撫でてくれるその手がとても柔らかくて、また眠ってしまいそうになる。
 顔の向きを変えると、すごくいい匂いがして思わず頬を染めてしまった。

「ほら、クルルだよ」
「あぁ」

 よかった。なんともない。

「そういえば私どうしてここに」

 私は飛び起きた。いつの間にか左の腕には何かが巻かれているようだった。包帯かな? 痛みはなかった。

「あらあら、もう少しひざ枕してあげたかったな」

 その人は拗ねたようにそう言ったが、それがなんだかかわいらしかった。そんなに若いようでもないようだけど、すごく綺麗な人だった。

 そこに、クルルが膝に飛び乗ってくる。怖い思いをさせてしまったな。
 周りを見ると、重厚な石の壁に、縦に長い格子の硝子窓。どこかで見たような……

「そういえば、自己紹介がまだだったね。私はフリーデルト」
「私は」
「アイ、でしょう?」
「え?」
「知ってる。最近いつもここを通っているよね」

 フリーデルトさんの見つめる窓の先。それは私の通学路だった。そうだ。ここはルーナ図書館。

「さて、そろそろ本題に入ろうか」

 声の方向を振り向くと、そこにはいつの間にか、さっき助けてくれた人がいた。

「あ、さっきはありがとうございました」
「俺の最強ポケモンを以ってすれば、あれくらいの敵なんてことはないさ。君が気絶するのは想定外だったがな」

 その人は得意げにそう語るのだった。でも、確かにあのポケモンたちの強さは普通じゃなかった。

「それはあなたが、火を使うからよ。アイが火が苦手なのは知っているでしょう?」
「普段の癖でつい大技使っちゃったよ、てへっ」
「てへっ、じゃありません。全く。お給料もらっているんだからちゃんとやってくれないと。それに怪我までさせてるじゃない」
「奴らがあそこまで強硬な手段に出るとは思わなかったんだ。想定外」

 ちょっと待って。どうして私が火が苦手なことを知っているの? それに奴らって……

「あの、黒ずくめの人たちのこと何か知っているんですか?」
「ん? あの服装センスのない組織のこと、ぅう」

 フリーデルトさんが必死に口を押さえていた。

「K。アイを不安にさせるようなことは言っちゃダメ」

 いや、もう十分不安なんだけど……

「Kっていうのは?」
「ああ、俺の名前。本当はちゃんとした名前があるけど、それは愛する人にしか教えない主義なんで」
「あの子、本当に大丈夫なの? どう見ても普通の子なんだけど」
「あいつは、スパイとしては最高の腕だよ。それは俺が保障する。盗聴されているのも逆利用するくらいだから」

 フリーデルトさんは本当でしょうねという目でKさんを見ていたけれど、こちらを見つめると天使のような笑顔でにこっと笑うのだった。それにしてもスパイとか盗聴とか話がどんどん物騒な方向にいっている気がする。もしかして、ものすごいことに巻き込まれているんじゃ。

「ねえ、手、痛まない?」

 そう尋ねるフリーデルトさんは、まるで母親のような暖かさを持っていると思った。

「あ、全然大丈夫です。それよりも一つ伺いたいことがあるのですがいいですか?」
「ん? なんでもどうぞ」
「二人はいったいどういう人なんですか?」

 それを聞くと、フリーデルトさんは、えーと、と少し困った顔をした。

「ああ、俺らはちりめん問屋の、ぅう」
「それは、今言うことはできない。でも、いつか分かる日がきっとくるから」

 いつか、きっと。その時までは、また危険に晒されることもあるのだろうか。
 クルルを見ると、またいつものように下を向いている。この子も狙われているんだ。何とかしないと。

「そろそろ、本当に本題に入るぞ」
「ええ、そうね」

 二人は立ち上がると、どこかに行くようだった。

「隣の図書室に移動しましょう」