シーン21「黒い存在」

「死にゆく者がここに一人」

 地の底から出てくるようなおぞましい男の声。
 それは両手に銀色にきらめく何かを持ち、こちらにゆっくりと歩いてくる。

「赤い瞳の人間には平等に死を与えなければならぬ」

 ……何を……言っているの?

「お前も例外ではない」

 その黒い存在はついに目の前にやってきた。
 周りは砂嵐で逃げられそうもない。何よりも足が震えて立ち上げれそうにない。

 一瞬銀色の何かがきらめいたかと思うと、クルルの前に突きつけられた。

「これはエアームドの羽から作られた刃。肉の体をつんざくことも容易だ」

 頭が痺れるのを感じる。震えが止まらない。

「まずは、そいつからだ」

 男の手が差し出され、銀色の刃がクルルに向かっていく。



 ……っ
 血が流れ落ちる。焼けるように熱い。
 何とか、クルルへの攻撃を食い止めたけれど、これは……時間稼ぎにしかならない。
 二の腕からは、とめどなく血が流れだしていた。

「大丈夫? クルル」

 クルルを向くと、クルルはおもむろに歩き出し、何と私の前に出てきたのだ。

「だめよ。クルル」

 男は刃を振って血を払い、その時に闇の衣の奥からぎょっと睨む視線を感じた。なんて冷たい視線なの。

「逃げて……クルル」
「無駄だ」

 男は足を一歩踏み出し、再びクルルに狙いをつける。

「心を持たぬこいつに出きることなど何もない」

 ……心を持たない?

 男は刃を振り上げると、力任せに一気に振り下ろした

「やめて!」