プロローグ


 カタン、コトン……カタン、コトン…………



 ……ふと窓の外を見上げる。

 赤く染まる夕暮れの冬の空。
 カタン、コトンという単調なリズムの中、同じような景色がただ一様に流れていく。
 窓にうっすらと映る自分の姿。
 それはひどくさえなかった。

 もうどのくらいの間、乗っているのだろう?
 幾多もの街を抜け、やがて田園風景が広がるようになり、今はもうすっかり森の中。

 窓辺のクルルとエリオス。
 何かに取り付かれたかのようにじっと外を眺めている。
 それはこの二人(二匹)の癖だった。
 珍しい色違いのプラスル。この二人はよく似ている……

 向かいにはリアさんが帽子を深々とかぶり俯いている。
 眠っているのだろうか。
 そう思ったけれど、退屈さと窮屈さにたまらなくなり何となく声をかけてしまう。

「リアさん、あとどのくらいで着きそうですか?」
「んー?」

 リアさんは寝起きの不機嫌そうな顔をして目をこする。

「えーと……多分……あと少しだよ」

 適当な答えのあとに、また目を閉じてしまった。
 私もリアさんみたいにできたら楽なのに。



 胸が落ち着かない。目的の場所が近づいているからだろうか。
 近づいているといっても、きっとそこまでの時間は長く感じられるのだろう。

 何となく、クルルの頬に手をかけてみる。
 クルルはそれにも構わず、じっと外を眺め続けている。
 この子は相変わらずというか何というか無愛想だった。

 ……今はその理由を知っている。残酷な理由。

 この子は何のために生まれてきたのだろう。
 そして、これからすることはこの子にとってどうなのだろう。
 答えは未だに出ない。


「まあ、可愛いわね」

 不意に後ろから声がかかった。
 その声に振り向くと陽気そうなおばさんがクルルとエリオスに熱い視線を浴びせていた。

「珍しい、色違いなのね。この子たち双子?」

 ……双子。
 確かにこの二人は双子のような存在なのかもしれない。
 でも、現実にはもっと過酷な関係。
 私は何も口にすることができなかった。

 おばさんはそんな私たちに少し眉をしかめつつも最後には笑顔で鼻歌交じりで奥のほうへと歩いていった。



 だんだん空が暗みを増していく。

 心臓の鼓動が早くなっているのを感じる。
 これから何が起こるのだろう?
 不安と喜び。
 こうしてずっと座っていると色んな感情が押し寄せてくる。
 クルルたちも同じなのだろうか。

「大丈夫、アイ?」

 いつのまに起きたのか、リアさんがこちらを見つめていた。
 吸い込まれそうな赤い瞳。私と同じ色。

「ん?」

 首をかしげるリアさんに大丈夫と微笑みかけるとアナウンスが流れてきた。
 あたりはすっかり暗くなっていた。